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Still Tazawa Lake

廣瀬 祥大

発行年: 2023
仕 様: 64頁
部 数: 限定300部
装 幀: 本多万智
随 筆: 阿部謙一
2017 年から2022 年まで、秋田県仙北市にある田沢湖とその湖畔を取材し、撮影された写真群を収録。
国策による開発で、水質や生態系に深刻な影響が及ぼされた歴史的変遷を持つ田沢湖。湖底が見えるほどに透明度が高く、藍緑色に輝く湖面は息を呑むほどに美しい湖の現在の水面下を注意深く見ると、本来在るはずの自然が失われている事象に気づかされると作者は言います。

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1940 年に灌激や電力確保のために引水した玉川の酸性水により、湖に棲む生き物は姿を消し、それに伴い、周辺で漁業を営んでいた人々も職を変えざるを得ない状況になりました。時代に翻弄された湖は83 年後の現在も当時の雰囲気から変わっておらず、水質の中和処理をしてもなお、多くの生き物が棲むには過酷な環境となっています。

田沢湖にはかつてクニマスという田沢湖固有のマスが生息していましたが、先に述べた酸性水により1942年頃に絶滅しました。時間は流れ2010 年に富士五湖の一つ、西湖でクニマスは再発見されたのですが、田沢湖の漁師らによって卵が放流され、定着した個体の末裔でした。

クニマスの再発見は日本中を駆け巡り、奇跡の魚と呼ばれ、多くの人々の関心を寄せたと思います。もうこの世には居ないと長らく思われていた魚がすぐ近くで発見され、長く人と生活していたのですから、驚いた人はたくさんいるでしょう。この発見により、ある種の希望が見え、クニマスを田沢湖に戻そうとする動きが生まれたほか、今まで解明できなかった生態について研究が開始されるなど、歴史が動こうとしています。

戻そうとする動きには、中和処理ができていないことや、クニマスが国内外来種にあたるなど、多くの課題があると思いますが、ひとまずは動き出したことに喜ぼうかと思います。(ステートメントより引用)

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廣瀬 祥大 Profile
香川県生まれ。東京芸術大学大学院修了。現在は東京を拠点に行い、人の営為・管理・自然のかかわりから生まれたものやその過程を軸に据えながら、作品を制作。