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Critique

アート・パワー

ボリス・グロイス

発行年: 2017.2
発行元: 現代企画室
翻訳: 石田圭子、齋木克裕、三本松倫代、角尾宣信
サイズ: 18.8 x 12.8
仕 様: 356頁
『アート・パワー』は、1997年から2007年までの間に、展覧会カタログや美術雑誌など様々な媒体でグロイスが発表した、美術に関する15本の論考を集めた批評集です。
収録されている論考が扱うテーマは、権力と芸術作品の関係、美術制度とキュレーターの役割の変化、芸術の自律について、社会主義国家や全体主義国家のもとでの美術、そして美術批評の機能についてと多岐にわたります。しかし、そこに通底しているのは、今日のコンテンポラリー・アートを支配する市場経済の権力に対する、冷徹な視線です。そして、その視線が明らかにするのは、このような市場経済の権力が、社会主義国家において芸術を支配していた権力のあり方と、実は地続きであるという事実なのです。 社会主義国家では美術作品は政治的プロパガンダとして現れますが、市場経済においては商品として現れます。しかし、従来の欧米の美術史は、政治的プロパガンダの美術をその分析対象から排除する傾向があり、この市場型の権力が社会主義型の権力と通じ合っている事実は明らかにされてきませんでした。その結果、美術における政治と経済のあいだの力のバランスが極度に歪められてきたと、グロイスは警告します。そこで本書全体を通じて彼が試みるのは、政治的プロパガンダの機能を果たす美術にもう一度光をあてることであり、そうした美術のための場所を確保し、偏ったアート・ワールドのなかに力の均衡をもたらすことなのです。そして「アート」の「パワー」とは、単一の力ではなく、そもそもそのような矛盾・対立しあう諸力の均衡をもたらす力を指しています。美術は社会の中で固有の力を持ちえますが、それは自己矛盾によって力を調整し、力の均衡をもたらすようなものであるとグロイスは論じます。そして、そのように力の均衡をもたらすような美術の実践を〈矛盾した対象(パラドクス・オブジェクト)〉と呼びます。社会主義国家のイデオロギーに動機づけられた美術と、グローバル化した市場経済のもとにある主流のコンテンポラリー・アートのどちらにおいても、〈矛盾した対象〉はそれが属するシステムにパラドクスを導き入れることによって力に均衡をもたらそうとするのです。では、美術はどのようにして〈矛盾した対象〉として我々の前に現れうるのでしょうか?また、そのときコンテンポラリー・アートを介して私たちは、社会をどのように見ることができるのでしょうか?本書はこうした問いについて、さまざまな角度から分析を行っています。